エコノメソッドでプロサッカー選手を育てるまでのブログ
サッカー愛にあふれたうんちく話

強い個が育つ「失敗」の捉え方

選手配置でコンパクトを保ちながらボールを奪い,そのまま攻め切るのか。

それともハードワークでコンパクトにしてボールを奪い,GKを使いながらグランドを広く使って攻めるのか。

このどちらが正解かはわかりません。

志向している戦い方の問題です。

前者の戦い方で勝利を目指すための選手配置は「1-4-4-2」が多いのかなと思います。

集団でコンパクトに守備が出来ますし,ボールを奪った後にそのままコンパクトさを生かして攻撃することが出来ます。

後者の戦い方で勝利を目指すための選手配置は「1-4-3-3」や「1-3-4-3]など,ウイングを置いている配置かなと思います。

グランドを広く使うための選手配置なので,コンパクトかつバランス良く守備をすることが容易ではありませんが,個の強さを生かすことができる配置です。

 

前者の戦い方は日本のサッカーによく観られます。

おそらく機敏で集団行動に適した日本人の特性に合っているのでしょうし,細かくボールを扱うテクニックを生かしやすいのでしょう。

さらには「失敗」に対する考え方も影響していると思います。

「失敗」をしないためには恐怖心を減らすことが大事です。

ではどうすれば恐怖心を減らすことが出来るのでしょうか。

それは複数でチャレンジすれば良いのです。

そうすればチャレンジと同時にカバーも出来るので失敗への恐怖心が下がります。

「もし自分が失敗しても,誰かがカバーしてくれる」

そんな安心感を生むのでアグレッシブなチャレンジが可能になるのです。

 

一方,後者はグランドを広く使うということは1人ひとりの距離が離れるので,個の質がより強く求められます。

それはボールを扱う技術だけでなく戦術理解やメンタル面でもです。

細かくボールを扱う技術は狭い局面では有効ですが,スペースにボールをダイナミックに運ぶには適しません。

また相手の配置を観察し,その都度有効なスペースを的確に見つけていかなければいけませんから,戦術的に高い理解度が必要です。

私は「失敗」に対する考え方が特に違うと思っています。

「失敗」を恐れる事がそもそも「失敗」だ。

そのような考え方だからこそ成立する選手配置なのかなと思います。

「ボールを奪われたら奪い返す」

この大前提が出来ているので一人ひとりの距離が離れても平気なのでしょう。

「チャレンジ&カバー」はサッカーの常識です。

でも「それを頼ることが前提」なのか,「そんなこと当たり前だろという感覚でチャレンジする」のかではかなり違うように思います。

 

世界で通用する選手とはどんな選手なのでしょうか。

私はサッカーが文化になっている国で認められる選手は,一様に

「圧倒的な個の強さを持っている選手」

だと思っています。

その「強さ」と身体的な特徴なのか技術なのか戦術理解なのか,もしくはメンタルなのか。

どれでも構いませんし,全てでも構いませんが,間違いなく言えるのは,

「一人でも失敗を恐れずに自己表現をすることができ,ボールを奪われたら奪い返すことが当たり前で,チームの勝利に向けて自己犠牲を惜しまない」

という選手だということです。

こんな選手は11人いたらそのチームは強いに決まっています。

 

昨日は奈良クラブジュニアユースの試合をナラディーアで観ました。

相手は「1-4-4-2」でした。

コンパクトさをキープしながらマンツーマン気味でハイプレスを仕掛け、奪ったらコンパクトのままワンタッチパスでボールを動かし,シュートまで繋げていました。

きっと奈良クラブの選手は相手の人数が多く感じたでしょう。

奪ってもすぐに奪い返され,次々とボールを動かされてシュートまで持っていかれるのですから。

私は奈良クラブ側には足らないのは戦術理解と「失敗」を恐れない「勇気」だと思いました。

相手がハイプレスで守備をしていて,コンパクトかつマンツーマン気味だという事は,奈良クラブの3トップは数的同数でマークされている状態でした。

そのことを理解していれば,相手の背後にボールを蹴り,相手を後ろ向きに守備にさせることで相手のハイプレスを無力化することが出来ますし,一気に押し上がって相手をオフサイドの位置に置き去りにしてしまうことで,攻撃に数的優位も作れます。

でも奈良クラブはそれが出来ずに,まんまと相手の戦術にハマってしまいました。

これはどちらが良いとか悪いとか言いたいのではなく,もし奈良クラブが世界で通用する選手を育てるために「1-4-3-3」を採用しているのであれば,「個の強さ」を育てていきたいところです。

昨日の試合だけで言うなら,相手と比べて奈良クラブの選手はおとなし過ぎですし,受け身過ぎだと思いました。

「世界で通用する選手」になることを子ども達に強要する必要はありません。

サッカーの楽しみ方は人それぞれです。

でもナラディーアという世界に誇れる素晴らしい施設が完成し,あのパリサンジェルマンも導入したことがあるエコノメソッドでトップチームまで一貫した指導を行っている奈良クラブなら,全ての選手たちがそれぐらいの気持ちでプレーするのは当たり前じゃないのかなと思います。

「1-4-3-3]の選手配置は「世界」を意識しているからに違いありません。

試合に負ける事より自分に負ける事の方が問題がある。

逆に言えば,

自分に負けない選手が11人集まれば試合に負けるわけがない。

 

奈良クラブのアカデミーには7つのコアバリューがあります。

「野心を持つ」

「主体性を持つ」

「正しい努力をする」

「やり抜く」

「感謝する」

「助け合う」

「尊重する」

私はこのクラブにいる以上,子ども達には「野心」を1番大事にしてほしいと思っています。

「野心」があるから,「失敗」を恐れないし,「正しい努力」も出来て「主体的」にもなれるのだと思います。

 

私は以前にも綴りましたが育成年代での「1-4-3-3」の配置にとても好感を持っています。

それは間違いなく「強い個」が育つからです。

これが私が奈良クラブを応援したいと思う理由であり,奈良まで子どもと共に引っ越した理由であり,私がこだわっている理由です。

これから奈良クラブアカデミーに関心を持たれる子どもや保護者の方がみえたら,ぜひ私のブログを参考にしてください。

何かのお役には立てるはずです。