ナショナルトレセン東海
長男は小学校4年生からずっと県トレセンに選ばれていました。しかし、長男にとっては友達が県内に広がること以外は魅力を感じていませんでした。
小学校5年生のときは、三重国体に向けた強化選手として合宿にも呼んでもらいましたが、街クラブの練習とトレセンの練習で身体は疲弊し、股関節痛を繰り返していました。長男は今でこそ180㎝ほどの身長がありますが、小学生のころは身長が小さい方で、負荷のかかるトレーニングには痛みや疲れを見せていました。
小学校6年生なった長男はFFPと呼ばれる都道府県協会ごとに選抜された選手の大会に出場しました。ちょうど夏休みだったので家族で会場の静岡県まで観に行きました。大会のルールでプレイ時間が制限されているらしく、長男は色々なポジションで出場していました。しかし、サッカーがしたい長男にとって、何とも苦痛な大会になっていました。個人がボールを持って逞しく(強引に)プレイする以外に戦術が無く、三重県チームは実力に勝る相手に対して個人が無理に仕掛けては奪われることを繰り返していました。長男は半ばあきれ顔です。楽しみにしていた大阪府トレセンとの試合はなぜかセンターバックでプレーしていました。この試合でマッチアップしたかった選手とも対峙することは出来ませんでした。
それでも長男は東海マッチと呼ばれる東海地区のトレセン大会等でのプレイが評価されたのか、年度末に静岡県で行われるナショナルトレセン東海に選出されました。
ナショナルトレセン東海には三重県の他に愛知県、岐阜県、静岡県の県トレセンから選ばれた選手のみがトレーニングに参加できます。
私はせっかくの機会なのでお休みを頂いてトレーニングの様子を観に行きました。これまでの三重県は東海マッチで愛知県や静岡県には大量失点して負けていました。それもFFPと同じ戦術でしたから長男は県トレセンの活動には楽しみを見いだせずにいました。今回こそはレベルが高い相手とトレーニングが出来ると楽しみにしていました。
トレーニングは午前と午後の二部制でした。いわゆる日本サッカー協会の指導だと思いますが、結局のところ個人の逞しさが東海レベルになったというだけで、長男が期待するポジションに応じて戦術的にプレイできる選手はいませんでした。長男はサッカーが好きなのでそれはそれとして真面目にトレーニングをしていましたが、表情は全く楽しそうではなく、イケイケでプレイする選手やその選手を褒めるコーチに対して、諦めるような素振りさえ見せていました。
4日間のトレーニングが終って、戻ってきた長男はすぐに
「全く面白くなかった。早く帰りたかった。」
と愚痴を言いました。もはや長男はスペインでの経験やエコノメソッドやバルサアカデミー奈良での学びでサッカーの基準がスペイン仕様になっていたのでした。
誤解して頂きたくないのですが、決してトレセン制度を否定しているのではありません。あくまで長男が将来プレイしたい国がスペインであり、その目標を達成するために育成年代で学びたいサッカーがスペインのサッカーだということです。
トレセンで学んだ選手がスペインに行けないと決めつけているわけでもありません。きっと個の技術だけ見れば日本は世界最高であり、育成年代は世界でも局面ではトップレベルで戦えると思います。しかし、日本がサッカー大国に対して主導権を握って勝つことはまだまだ難しいのではないでしょうか。それはなぜかというと、育成年代は個にフォーカスをして逞しい個が集まれば強いチームになると考えているのが日本であるのに対して、世界はサッカーがチームスポーツである事を前提にチームで生きる個を戦術に合わせて育てていくからです。長男は実際にスペインに行ったことで、スペインの普通の街クラブの選手が当たり前に出来るチーム戦術が、日本では当たり前ではないことを身をもって知ってしまったのでした。
次回は「バルセロナアカデミー選抜でインド遠征へ」です。