アルベルト・ベナイジェスにスカウトされる
いよいよワールドチャレンジが開幕しました。長男の背番号は8番です。関東と関西のスクール生が集まっているのでキャプテンは関東の選手と関西の長男でした。もともと長男はキャプテン気質ではないので、後にも先にもキャプテンマークを巻いたのはこのときだけです。
初代エコノメソッド選抜のメンバーは個性派ぞろいでした。チーム戦術はエコノメソッドの育成哲学に基づいていました。選手の固定は無く、全員が試合に出場しながら勝利を目指します。出場選手選びは非常に難しかったと思います。基本的に前半チームと後半チームという形になりました。なおワールドチャレンジはフルピッチの11人制で行われます。ジュニアの選手たちにとってフルピッチでの試合経験は少なく、この大会は将来に向けた貴重な体験でもありました。
長男は1-4-2-3-1の2にあたるボランチでプレイしました。スペインのサッカーなら育成年代は1-4-3-3が多いのですが、この大会は寄せ集めの選抜チームだったことが理由だったのかもしれません。
初戦の名古屋グランパスに惜敗したエコノメソッド選抜は残念ながら2試合目の街クラブにも負けてしまいました。選抜チームかつメソッド優先のチームの難しさを感じました。これで決勝トーナメント進出には3試合目に勝つしかなくなりました。
そんなときです。長男が私に声をかけてきました。
「アルベルト・ベナイジェスとしゃべったで。」
と言うのです。このアルベルト・ベナイジェスという人物は誰かと言うと、長男が大好きなイニエスタ選手をFCバルセロナにスカウトした人物で、このときイニエスタ選手が在籍していたヴィッセル神戸に彼も来ていたのです。
後に長男と詳しく話して分かるのですが、長男はアルベルト・ベナイジェスが神戸にいることをすでに知っていました。ワールドチャレンジ中に会えるかもと思っていたそうです。グランドでスペイン語を話す大男を見つけた長男は、自分から「ベナイジェスですか?」と声をかけたそうです。彼は通訳を通して「どうして名前を知っているんだい?君はエコノチームの8番だろ。良い選手だ。」と長男に話したそうです。そんなことがあったとは知らない私は、長男の言葉を聞いてピンと来ていませんでした。
その晩です。私のスマホに1本の電話が入りました。それはヴィッセル神戸の関係者からでした。なんとアルベルト・ベナイジェスが長男をヴィッセル神戸にスカウトするべきだと言っていると言うのです。まるで物語のようですが、実はそうでもないのです。ワーチャレ前に長男はイニエスタ自伝を読んで夏休みの宿題の読書感想文を書いていました。そこに「アルベルト・ベナイジェスに会ってスカウトされたい。」と書いていたのです。まるで予言のようです。長男はこの大会に向けてこんな野心を持って臨んでいたのです。チャンスは掴みに行かないと掴めない。まさにその通りになりました。
翌日、私はアルベルト・ベナイジェスと会って、話をしました。想定外の展開に驚きしかありませんが、暗中模索だった進路に突然光が差し込んだと思いました。
エコノメソッド選抜は3試合目の浦和レッズ戦に全てをかけました。しかし、1対1で試合が終わりました。決勝トーナメント出場は叶いませんでした。長男は2ボランチながらかなりアグレッシブにプレーしました。それでもGKのナイスセーブもあり、得点を奪うことは出来ませんでした。またしてもMVPを獲得することも出来ませんでした。
こうして初めて出場した全国大会は苦い結果になりましたが、全国の舞台を経験したことで自分の実力を確認できたことは大きく、決して日本の中で自分が劣っていることは無いと実感できました。
次はいよいよ進路です。
次回は「アメージングアカデミー入団を決意」です。