3つの大切なこと
私は小学校教諭時代の終盤(笑)に,子どもたちに必ず「3つのこと」を伝えていました。
それは,
「丁寧」
「一生懸命」
「思いやり」
です。
私がなぜこの3つを大切にしていたのかを説明します。
丁寧
ずっと担任をしていると,落ち着いて学習が出来たり,テストでそれなりの点数が安定してとれる子には傾向があることが分かってきました。
それは何事にも「丁寧」だということです。
例えば,毎日の漢字練習の文字がキレイだとか,ノートに計算をするときに定規を使っているとか,上履きのかかとをそろえて下駄箱に入れているとか,移動する時に椅子が出しっぱなしになっていないとか。
これらができる子とできない子の差は,一概には言えませんが,習慣が影響していると思います。
そこで,私が学級担任をするときにこだわることが丁寧さを「習慣化」することです。
出来ている子を褒め,出来ていない子を励まし,時には厳しく,意識させていきます。
学年が低いほど習慣になりやすい傾向にあり,学年度が終わるころには,教室移動した後の教室を覗くとイスがきちんとしまわれているようになります。
きれいな教室にいて心が落ち着かないということはありません。トイレがきれいだ落ち着くという感覚と同じですね。
一生懸命
人には得手不得手があります。
それは個性でもあります。
気をつけなければいけないのが,だからと言って「やらなくてもいい。」とか「できなくてもいい。」という話ではありません。
学校は学びの場であり,子どもたちを自立させるために教育し,社会の形成者へと育てなければいけません。
だから私が大事にしていたことが「一生懸命」です。
子どもたちがよく言う言葉で,「無理」「だるい」「めんどくさい」「はあ,意味わからん」などがあります。
これらはある興味深い言葉です。おそらく,この発言をする子どもたちは過去に嫌な経験をしています。
だから「どうせ無理に決まっている。」と思っているのです。
では,「学ぶことに喜びを感じない子ども」なのかと言えばそうではありません。
私が子どもたちと取り組んでいたことは「ちょっと頑張ればできる」ことを「一生懸命」させることでした。
大切なことはできるだけ早く「達成感」を味わったり,「成功体験」をさせてあげたりすることです。
例えば「自分から進んで挨拶をする」「次回の漢字50問テストで80点以上をとる」「自分が食べられる量の給食を毎日残さず食べる」「掃除はチャイムが鳴るまでやりきる」「予定を毎日書く。」とかです。
これらはそれほど難しいことではないので頑張れば出来ます。
また,出来たときにその「頑張りを認めていく」ことも大事です。そうすれば少しずつ先ほどのような発言は減っていくでしょう。
「一生懸命頑張ればできる」
このような思考を意図的に育てていきます。
思いやり
そして,何より忘れてはいけないのが,学校は「集団生活の場」だと言うことです。
どんなに丁寧でも,どんなに一生懸命でも,それが独りよがりであってはその価値が下がります。
丁寧さや一生懸命さは他者との関係性の中で生かされていくべきなのです。
だからこそ「思いやり」が大切です。
私は時間が許す限り,学級の課題は「全員で」話し合って解決の糸口を模索してきました。
例えば,休み時間に教室内でAさんとBさんがけんかをして,AさんがBさんを泣かしてしまったとします。これだけをとれば,AさんがBさんに謝ることになりそうです。でも本当にそれで解決するのでしょうか。
本当の解決が「学級集団の絆を深めること」だとしたら,謝らされたAさんに絆意識は芽生えません。
大事なことは,事実を確認し,AさんとBさんの本音に寄り添うことです。
なぜAさんとBさんはケンカをしたのか?
なぜAさんはBさんを泣かしてしまったのか?
なぜBさんは泣いてしまったのか?
AさんとBさんに良いところと悪いところはあるのか?
教室内にいた他の児童は何も関係が無いのか?
色々と話し合っていくと,Aさんの思い(本音),Bさんの思い(本音),他の児童の思い(本音)が分かってきます。
そうすれば,例えAさんが謝ることになったとしても誰もが納得できますし,「一つのケンカ」が大切な「学級の課題」になります。
当事者だけを集めて話し合うことが必要な時がありますので,あくまでも例ですが,みんなで解決したことはみんなの力になり,人は一人で生きていないということを学ぶ機会になります。
私は25年間でたくさんの思いやりを体験してきました。幸せなことや嬉しいことだけではなく,切なさや虚しさを感じることもありました。機会があれば,ブログで紹介したいと思います。
感性を育てる
これらはすべて心の話です。結局は何事にも真心を込めることが大事だという話です。人はロボットではありません。マニュアル通りにはいきません。だから心を育てることが大事なのです。
私はそれを「感性」と呼んでいます。
これらのことはチームスポーツであるサッカーにも当てはまります。「感性」が豊かな選手達が本気で勝負をするから観客は深く感動するのです。