選手起用…
今回は選手起用について綴ります。
私はジュニアチームのコーチ時代に一番心を痛めていたのが試合での選手起用でした。
特にサッカーを楽しみに試合を楽しみに来ている子どもたちの出場時間を奪ってしまうわけですから,コーチや監督にとって一番が責任が重くなるところです。
サッカーチームは,日々の練習で試合に向けて取り組み,チームの課題を試合で確認する。
特に育成年代ではこのルーティンの繰り返しを通して,サッカー選手としての成長と人間としての成長を促していくことになります。
サッカーには冠がある
サッカーには勝ち負けがあります。
勝ったら次のステージに行けたり,優勝出来たりと,勝利の価値を高める「冠」がつくことが多いです。
だからチームや選手は勝利へのモチベーションを高めることにもなります。
勝っても負けても何も変わらないならどのようなメンタルで試合に臨めばいいのかが定まらなくなるのも分かります。
しかし,この「冠」こそが非常に悩ましい問題を生み出します。
育成年代であるということ
育成年代は全員が試合で経験を積むことが望ましく,できればプレー時間も同じぐらいが良いと思います。
それはサッカーがチームスポーツであるので,チームでの無駄な「差」を生み出す必要が無いことと,チームで勝利を目指すという当たり前の意識を統一しやすいからです。
競争の原理で,チームの勝利に貢献できる選手ほど試合出場の可能性が高いとか出場時間が長いとか,それらは理屈としては分かるのですが,「育成年代」であるということを考えたら「競争の原理」をそのまま取り入れるのは違うよう思います。
Aチーム,Bチーム,Cチームという言葉をよく聞きます。
当然Aがファーストチームということになります。
チームの勝利に貢献できる選手の集団と解釈するなら,Cチームは貢献できない選手の集団ということなのでしょうか。
もしそうなら教育の一環として行われている学校の部活でこのチーム分けは残酷です。
教育の中では競争の原理は慎重に扱われるべきだと思います。
チームの分け方案
「ではどうやって分けると良いのか?」
おままごとのように思われるかもしれませんが,私は発達段階や課題の内容によってチーム分けをすると良いのではないかと思います。
例えば,身体的な発達段階でチーム分けする方法です。
分かりやすいのは,小学校の低学年チーム,中学年チーム,高学年チームです。
ただし,この中に身体的発達が早い子どもがいます。
この分け方では身体能力がずば抜けて高い子が混じってしまう可能でもあります。
サッカーに正解が無いように完璧な分け方もありません。
だから,課題の内容で分けるチームも必要です。
例えば,ボールを運ぶことが課題のチーム,シュートが課題のチーム,ディフェンスが課題のチーム,ポゼッションが課題のチームなどです。
個人が小グループ,そして集団へ。
精神的身体的特徴を考慮しながら子どもの課題がちょうど良いハードルになるチームを構成する。
そうすれば無駄な「差」を作ることなくサッカーを通して人を育成できるのではないかと思うのです。
私の後悔
私がコーチ時代に全日本少年サッカー大会の指揮を執りました。
ある6年生は素人でチームに入ってきました。
その子の担当は私でした。
彼は順調に成長しているように感じていましたが,ある時期からドリブルに固執するようになっていきました。
私がドリブルも一つの前進する方法だと働きかけても,ボールを持つと常にレガテ(抜くドリブル)を仕掛けていくようになりました。
全日予選当日,ミーティングでチームの勝利のためにプレーできる選手を選ぶこと,選ばれない選手がいること,選ばれた選手は選ばれなかった選手の未来のために全力で勝利を目指すこと,を伝えました。
私は彼を起用しませんでした。
チームの結果は敗退。
彼はチームを辞めました。
小学校生活最後の大会で1秒も出場できなかったわけですからショックは計り知れません。
私は今でもこの時のことが頭に浮かびます。
彼を出場させるべきだったのか?
でも・・・。
勝負をしているのは誰なのか?
サッカーをしているのは誰なのか?
今でも選手起用する時にはこの時のことを思い出します。
サッカーは勝負を楽しむスポーツですが,勝負をしているのは選手です。
コーチや監督ではないのです。
「プレーヤーズファースト」
私たち大人は常にこの言葉を忘れてはいけないのだと思います。
この問題に解決はありません。
でも悩み続けることは必要です。