バルセロナアカデミー奈良が誕生したのは長男が小学校6年生の時でした。
田原本町にある奈良フットボールセンターまでは三重県の実家から自家用車で片道1時間50分ほどかかります。
私は「それぐらいなら行ける!」とすぐに思いました。
長男はエコノメソッドのキャンプには参加していましたが,定期的にスペインサッカーを学ぶことはできず,当時行われていたエコノメソッドのアドバンスキャンプに行くと習慣にしている子にうらやましさを感じていました。
まさに地方の町の子どもの弱みです。
だから私はエコノメソッドのキャンプでは練習内容をノートに全て記録し,息子たちや自分のチームの子どもたちに教えるための参考にしていました。
ただしキャンプは年間2回程度ですし,費用もそれなりに高価なので経済的にも苦しさがありました。
三重県から田原本町までは名阪国道を使うので高速代も多少抑えられます。
また長男は生粋のバルセロナ好きです。
絶好のタイミングでした。
長男と二男のアカデミー参加を決めました。
毎週金曜日,仕事が終わると全力で家に戻り,二人を乗せて田原本まで向かう日々をスタートしました。
私の母親が作ってくれる鮭おにぎりを3人で食べながら伊勢自動車道と名阪国道を走りました。
当時の愛車はアイサイト付きの初代インプレッサです。
この車で日本中を走り回りました。
おにぎりを食べながら奈良にも通いました。
だから長男はインプレッサを手放したと聞いたときとても残念がりました。
バルセロナアカデミー奈良は立ち上げの年でしたので,奈良の中でも関心が高かったように思います。
私は読売テレビの取材を受けて密着取材で三重県から奈良まで通うちょっと変態な家族として紹介されたりしました。
長男や二男,三男はテレビ局の取材が入ると聞いてテンションが上がっていました。
三重県なのでその放送はテレビで観れていないのですが,奈良に来たときに何人かの方に観たと声をかけていただきました。
長男は特にですが大好きなバルセロナのエンブレムが入ったトレーニングウェアを着ることができる喜びは計り知れなく,毎週金曜日を楽しみにしていました。
私はジュニアの練習が無い金曜日のみトップチームの練習に参加していました。
それも行けなくなりました。
ジュニアのコーチをしながらトップチームでプレーし,金曜日に奈良に行く生活は,もはや過酷そのもので,いよいよ現役から離れる日が近いことを意味していました。
長男は8月に行われたワールドチャレンジで来日したFCバルセロナカンテラと日本のアカデミー選抜の一員としてトレーニングマッチに参加し,12月に高知県で開催された八咫烏カップ,1月にインドで開催されたバルセロナアカデミーパシフィックカップに参加しました。
カンテラとトレーニングマッチは自分の未来像が明確になるほどの刺激的な経験になりました。
八咫烏カップは残念な試合結果になりましたが,私は保護者の方と繰り出した高知の夜が幸せ過ぎた思い出があります。
子どものサッカーに引率すると地方の旨いものが食べられて,風土に触れることができる特権があります。
これも息子たちに感謝するところです。
インドにはさすがに引率はしませんでしたが,長男は本家のアカデミーにPK勝ちが出来て,見事3位に入りました。
ダイレクターのエドゥーやスタッフの方にも良くしていただき,長男はバルセロナの一員として小学校生活の締めくくりができたのでした。
この年,私が1番嬉しかったことは,無事に三男もアカデミーに入ることが出来たので,3兄弟全員がバルセロナのエンブレムを付けて同じ場所でプレーできたことです。
日々の運転の苦労などどこかに吹き飛んでしまうような気分でした。
結局,長男は1年間,二男は4年間,三男は3年とちょっと奈良に通いました。
週末は長男がいる山梨に行くことが増えたため,練習日を火曜日に変更してからの3年間は仕事との両立と走行距離に悩まされて苦しいことが多くなりました。
二男と三男にはちょっと可哀相なことをしましたが,それでも二男は無事に最後までやり切りました。
二男も様々な大会に参加させていただきました。
二男はのびのびとはプレーできませんでしたが,それでも世界を広げると言う意味では良い経験になりました。
三男は山梨で開催されたU10のジャパンカップに参加できました。
三男は最後までやり切れなかったのが心残りですが,コロナ禍と奈良での生活が始まってしまったので送迎が不可能になりました。
三兄弟だと全員に長男のようにしてあげられないもどかしさがどうしてもあります。
だから長男には常に突き進んでいて欲しいと願ってしまう親心があります。
私がバルセロナアカデミー奈良に通うために費やした時間と費用,そして走行距離はそれなりのものです。
渋滞に巻き込まれたり,工事で迂回したり,タイヤがパンクしたり,本当にいろんなことがありました。
周りからしたらきっとバカげていると思うでしょう。
それでも私は子どもの今しかない時間を無駄にしたくなかったのです。
時間はお金で買えません。
子どもの今もお金で買えません。
どちらかというとやり切った気分です。
だから自慢できるぐらい後悔はないです。