長男と公園で自主練をしていました。
長男が蹴ったボールはコンクリートの壁の前に生えている木に直撃しました。
跳ね返ったボールはまっすぐ公園の入口へと転がっていきました。
そこにはネットはありません。
公園の外に出ればそこはとても急な坂道。
それも数100mは続く真っ直ぐな下り坂。
例えて言うなら長島スパーランドにある名物ジェットコースター「スチールドラゴン」の最初の落下ぐらいの急な坂。
「やばい!!」
私と長男はボールが外に出ないように猛ダッシュしました。
しかしまったく間に合いません。
さすがボールは汗をかかない。
ボールは遠慮なく外に出てしまいました。
するとちょうど悪いタイミングで下りの車が走ってきました。
「やばい,ぶつかる!!」
私たちは祈るようにボールの行方を見つめました。
ボールはぎりぎりで車に当たりませんでした。
ボールは車をよけるように道路の反対側に転がっていきました。
「よかった。ついてる。いや,やっぱりよくない。ついてない。」
ボールは滑り台をすべるように転がり出しました。
私は公園から飛び出し,全力で手前の歩道をダッシュしました。
ボールは徐々に加速しながら私の斜め前を転がっていきます。
「どうしよう。間に合わない…。」
その時です。
奇跡が起きました。
私の目の前を一台の原付が「ブイーン」と勢いよく下っていきました。
その原付は何と私のボールに向かって斜めに走り,歩道に前輪を押し付けるようにしてボールを挟み込んだのでした。
時間にして数秒のことでした。
まさに神セーブ。
私は左右を確認してから原付の方に走っていきました。
原付を運転していたお兄さんは,ヘルメット越しで分からなかったのですが,たぶん笑顔でボールを拾い上げ,私に渡してくれました。
私は全力で,
「ありがとうございます!!」
と頭を下げて,ボールを受け取りました。
お兄さんは,ヘルメット越しで分からなかったのですが,たぶん笑顔で,
「いえいえ。」
と言ってくれました。
私は自分のサッカー人生の中でこんな神セーブを観たことはありません。
私はお兄さんに,
「お名前だけでも教えてください。」
と言いました。
するとお兄さんは,
「名乗るほどの者ではありません。」
と答えて颯爽と坂道を下っていきました。
というのは嘘ですが,お兄さんのとっさの親切のおかげで,ボールは無事に戻ってきたのでした。
お兄さんの道徳的な実践力に感動しかありません。
ああ,本当に良かった。
それにしてもお兄さん,神やわあ。