ユースワーチャレに出場するために来日したRight To Dream(以下RTD)が昌平高校と初戦を行いました。
RTDは時差や日本の気候,台風の影響でコンディションは十分ではなかったと思います。
一方,昌平高校も公共交通機関の影響でいわゆるAチームが試合開始時間に間に合わず,先に大阪入りしていたいわゆるBチームが試合の臨んでいました。
条件的にはどちらも対等です。
そんな中,RTDは育成年代のお手本のような試合展開でした。
昌平高校の4-4-2のハイブロックに対して,4-2-3-1のRTDはGKと2センターバック,2ボランチで見事に対応してみせました。
黄緑がRTDで黄色が昌平高校です。
まずRTDのGKがボールを持ちます。
2センターバックはペナルティーエリアの幅より少し狭いぐらいの幅をとります。
昌平高校の2トップは2センターバックを監視します。
RTDの2ボランチは10mに満たない距離でペナルティーアークから5m程度離れた位置に横に並びます。
昌平高校はRTDの2ボランチを同じように2ボランチが監視します。
RTDの両サイドバックは昌平高校の両サイドハーフが監視します。
RTDの両サイドハーフはウイング気味の位置立つので,昌平高校の両サイドバックが監視します。
RTDのワントップは昌平高校の両センターバックの間に立つことでセンターバック2枚をピン止めします。
必然的にRTDのトップ下は昌平高校の2ボランチと2センターバックの間に大きく開いたライン間で自由にプレ―出来る状態になります。
この時点で明らかにRTDが有利です。
つまりハイブロックはRTDに分があるということです。
ポイントはRTDのGKがすぐにボールを蹴らないことです。
GKを使えば数的優位になることを彼らは確実に理解しています。
昌平高校がボールを奪うためにRTDのGKにプレスをかけるなら,2トップのどちらかか,2ボランチのどちらかということになります。
彼らは相手の誰がGKにプレスに来たかを観ていて,監視が外れた選手を使って数的優位を生かしてビルドアップをしていたのです。
それが面白いぐらいにハマりました。
彼らは仲間とどれくらい離れるのか,どれくらい近づくのか,角度はどれくらいか,全て意図を持ってプレーしていました。
離れすぎたらワンタッチのパスが難しくなりますし,ミスが起きたときのネガティブトランジションが遅れます。
近すぎたらワンタッチパスは容易ですが相手のプレスを受けやすくなります。
これらも含めて立ち位置を調整していました。
確かに止める,蹴るなどの技術は必要だが,常に数的優位かつGKに下げるという選択肢を持っているので精神的に余裕がありました。
また時に,ライン間にいるトップ下にロングボールを通したり,サイドに張っているウイング気味のサイドハーフにボールを蹴ったりするので,それを警戒した昌平高校の4バックはほぼピン止めされていました。
また簡単にサイドバックにボールを入れないことも徹底されていました。
サイドバックにボールを入れたことでスペースが窮屈になり,相手のプレスを受けてしまうことがよくあるからです。
だからGKにプレスが来なければほぼサイドバックにはボールを入れていませんでした。
相手のプレスによってどこに数的優位が出来るのかを理解していて,そこを使って前進することが彼らの当たり前なのです。
昌平高校の疲労度はすさまじく,何とか個人で剥がしたとしてもすぐに真ん中に集結されてスペースを消されるので,活路が見出せません。
プレスに行っても数的優位を使われてプレスを無効にされてしまいます。
まさにボールは汗をかかない。
RTDはそんなボールの動かし方をしていました。
だから昌平高校は体力と精神力がそがれていったのでした。
試合結果は5対0でRTDの勝利でした。
昌平高校はすごく貴重な経験をしました。
このサッカーを体感したことで,サッカーはどんなにテクニックがあっても,それを発揮できなければ意味が無いし,そのテクニックだけでは勝てないということを学んだはずです。
サッカーはチームスポーツです。
チームでどのように戦うのか。
それらの戦術が整理されていることが大切なのです。
きっと昌平高校のサッカーは良くなっていくと思います。
例えばミドルブロックで対応していたらどうだったかとか,ローブロックならどうだったかとかです。
ぜひ相手に合わせて色々な戦術を普段から練習して欲しいなと思いました。
サッカーには勝ち負けがありますが,育成年代にとって大切なことはサッカーを楽しむことであり,サッカーを学ぶことです。
長男はRTDと試合がしたいと瞳を輝かせていました。