ダビッド・エルナンデスの言葉
ユース1年目の6月ごろはチームの戦術に戸惑いを見せている時でした。長男がアメージング・アカデミーで学んできた戦術とは違う指示を試合中に受けることがありました。長男はその指示の意図は理解できるのですが,どうしてもその指示とは違う戦術の方が有利だと思えて,身体が抵抗する感じでした。
私と長男はよくサッカー談議をするのですが,長男はこの指示に対してよく不満を漏らしていました。私も長男と同様にコーチの意図は分かります。でも,どんな言葉をかければ長男が迷いなくその指示通りにプレイできるのかが分かりませんでした。
ちょうどその時です。サッカーサービス社の創設者であり,エコノメソッドを考案したダビッド・エルナンデスが来日し,トップチームの試合前にジュニア向けクリニックをダリオと一緒にすることになりました。ダビッドとは長男がアメージング・アカデミーU13の時に山梨で会って以来です。
保護者だけではなく外部の指導者もピッチサイドで彼のクリニックを参観できるということなので私は遠慮なく参観を申し込みました。
当日,私はダビッドのクリニックを観ながら,熟年者ならではの落ち着きを感じていました。
クリニック後にダビッドと話をする機会を頂けました。そこに長男もいたので,先日の指示について質問をしました。すると彼は「ユース期になると,これまでに学んできた戦術を基にして,チームの勝利のために,今回のような指示をすることはある。しかし,それはその指示を理解できる人にしかしない。」と話してくれました。私達は「やっぱり。」と言う気持ちになりました。さらに長男が「いつかはバルセロナでプレイしたい。」と言うと,彼は「あまりバルセロナを目標にしない方が良い。なぜならほとんどの人はバルセロナには入れないからだ。そうすると目標が達成できない自分に対して悲しくなり,サッカーそのものを楽しめなくなる。そうではなくて,自分が幸せに感じる場所でプレイをすることで,徐々にステップアップした結果,バルセロナに入れたなら嬉しいと考えるべきだ。大切なことは幸せと感じるかどうかだ。」と優しく諭してくれました。私達は彼の言葉を聞いて,奈良クラブユースに加入してからずっと感じていたもどかしさがすっと抜ける気持ちになりました。彼からもらった「自分が幸せかどうか」と言う価値観は,この先の私達の指標になりました。
ちなみにダビッドと私は同級生と言うことが話していて分かりました。おじさん二人は年齢で共通点を見つけ,なぜかがっちりと握手を交わしたのでした。
私達がアメージング・アカデミーと奈良クラブを進路に選んだ理由が,今回のようにエコノメソッドを身近で学ぶことができるからです。私の知る限り,日本のチームでサッカー大国スペインのフットボールを徹底的に研究したコーチングがスペイン人から直に受けられるチームはこの2チームしかありません。この選択が正解かどうかは本人次第ですが,少なくても私達に迷いはありませんでした。
次回は「京都サンガへの挑戦」です。