2種登録と怪我
長男のコンディションは確実に上がっていました。ユースの練習では物足りないぐらいのプレイを見せていました。
そんなとき,ついに2種登録の朗報が届いたのでした。それはちょうどルヴァンカップでサンフレッチェ広島との対戦を控えたタイミングでした。
2種登録の書類に署名をする日がやってきました。
長男はいつも通りの練習日でした。私もいつも通り見学をしていました。
練習は終盤に差し掛かり,最後はゲームを行いました。最初のゲームに出場した長男は,休憩後にもう一度ゲームに出場しました。もし最後のゲームでプレイをしなかったらと思うのですがそれもきっと運命です。ラストプレイでした。相手ゴール前で相手をかわした長男はGKと球際のデュエルになりました。私は心の中で「止めろ!」と叫びました。しかしその思いは届きません。ボールが破裂しそうな音がグランドに響き渡りました。お互いがボールを蹴り合った結果,長男の膝はその反動で外側に持っていかれてしまいました。
悶絶しながらピッチに倒れる長男。私は全身に寒気が走りました。長男は仲間に担がれてピッチサイドに運ばれました。トレーナーも心配そうに長男の膝を診ています。
練習後,事務所に長男が現れました。やはりまともに歩けません。私が「どう?」と聞くと,「分からんけど、膝が持っていかれた。歩けやん。やばいわ。」と残念そうに答えました。中三の時の疲労骨折を思い出しました。あの時も最後の1年が怪我で苦しめられました。
「またか。よりによって2種登録の日に。」
私は目の前が真っ暗になりました。本当は長男の方が辛かったはずなのに。親失格ですね。
その日の夜,多くの仲間が長男に励ましのメッセージをくれました。私達は雑魚寝をしながら,仲間への感謝と怪我をした悔しさを噛みしめました。奈良育英高校相手に勝利して,このまま最後の1年を駆け抜けようとしていた矢先の不運でしたが,過去には戻れません。私達は少しでも早く復帰できる方法を考え始めました。私達は目標を達成するためにそれなりのリスクを背負って奈良に来たのです。歩みを止めることはできません。
私達の気持ちはこの怪我でより強くなりました。
次回は「幸せのフランス遠征」です。