長男がJリーグで初スタメンしました。
この世に生を受けてから18年と8ヶ月での出来事でした。
これが早いのか遅いのか。
凄いのか凄くないのか。
それは他者の価値観にお任せします。
しかし私達家族には間違いなく特別な出来事でした。
「海外でプレイするためにまずは日本でプロサッカー選手になる」
覚悟を決めて山梨で寮生活を始めたときから私達の生活は激変しました。
月々の寮費や遠征費,何度も何度も通った山梨への交通費,二男や三男の移籍,私の退職,奈良への引越等。
全てをサッカーに注ぎ込んできました。
そこまでしても報われない選手達がいる中で,長男はプロサッカー選手になり,初スタメンを達成したのです。
どんなにプレイ内容がイマイチでも,どんなに途中交代であっても,チームが負けたとしても,私達家族には誇らしさしかありませんでした。
試合後,ファンサービスに応える長男の姿は間違いなくプロでした。
今日はそれだけで十分です。
多くを望みたくなりますが,やっぱり今日はこれで十分です。
始めの一歩の次は普通の二歩です。
三歩四歩と進んでいかなくてはいけません。
小股だったり大股だったりするでしょう。
立ち止まることもあるでしょう。
それでも今日で二歩分だけ前に進んだのですから目標に向けて確実に近づけました。
「この日があったから今がある」と思える未来へ。
嬉しさと悔しさとともに記念すべきこの日を終えました。
翌日,三男が奈良クラブユースに体験に来ました。
私のせいで,一度はサッカーを嫌いになり,辞めようとしていた三男。
仲間に声をかけてもらって,中学校でもサッカーを続けました。
その三男がついに自ら動き出しました。
「自分を変えたい」
そう決意して地元を飛び出す覚悟で体験に来ました。
私は
「99%,無理やと思うけど,挑戦しようとしたことは素晴らしい。」
と三男に言葉をかけていました。
三男は私の言葉を聞いて,本気のサッカーから逃げた自分の過去を悔んでいました。
それでも三男は1%の可能性を信じることにしました。
三男の立ち位置からしたら無謀な挑戦です。
それでも三男は奈良にやってきました。
私は長男と三男のプレイを眺めていました。
三男は私のアドバイスを忠実に守っていました。
誰よりも先に守備に奔走し,仲間とコミュニケーションをとり,相手の逆をとるボールコントロールで,サッカーを満喫していました。
ゴールしてはガッツポーズをし,仲間の良いプレイに称賛の声をかけ,惜しいプレイには全身で悔しさを表現していました。
まさに三男が出来るプレイそのものでした。
長男は三男が小学3年生から離れて生活しています。
「あんなプレイできるんや。良いやん。がんばってるし,楽しそうで。」
長男は眩しそうにそんな言葉をつぶやきました。
「オレ,いつからサッカーが楽しくなくなったんやろなあ。もっと楽しまないかんよなあ。」
長男は自分のこれまでの歩みを三男の姿から振り返りました。
三男は
「もっと出来た。悔しい。」
と言いながらもやり切った表情で戻ってきました。
長男と三男がここにいる。
それだけで私は幸せでした。
もっと言えばここに二男がいたらもっと良かったですが,思い通りにいかないのが人生であり,自分達だけが都合よく成功しないと言う現実でもありました。
三男が合格する可能性は限りなく低いです。
それもで三男のプレイは間違いなくサッカーの原点であり,初スタメンを果たした長男の心に響くものでした。
プロサッカー選手は結果が全てです。
でも人である以上,プレイする人にはそれぞれのドラマがあります。
そしてそのドラマはまだ途中です。
スタジアムはまさに劇場ですね。