GKがDFからMFへのビルドアップに参加することに賛成します。
なぜならGKを使うことで「数的優位」になるからです。
私がジュニアチームのコーチをしていた時は,GKもフィールドプレーヤーと同じトレーニングをしていましたし,どちらかと言えばGKがスイーパーのような役割を担っていました。
GKとしてのセービングやパンチングなどの技術の向上も必要なのですが,私にとっては最優先ではなく,シュートを打たせないことを最優先にしていました。
誤解を招かないでほしいのですが,決して技術トレーニングをしないわけではありません。
あくまでジュニア年代の優先順位の話です。
さて,先日の奈良クラブトップチームの試合では,奈良クラブのGKが相手のプレスを受けてやむを得ずロングボールを前線に蹴らなければいけない場面が何度もありました。
試合の中ではそのような場面はよくありますので,そのプレーそのものが悪いわけではありません。
例えば,GKがプレスを受けた場合はロングボールを相手の背後に蹴ることが一つの戦術になっていれば,それをスイッチにしてダイレクトプレーに持ち込むこともできます。
しかし先日の奈良クラブは,ワントップのFWの選手が2人から3人のDFを相手にしなければいけない場面が目立ちました。
これでは前進していくことは非常に厳しいと思います。
大分はGKがゴールキックでロングボールを蹴る戦術を使っていました。
つまりDFからMFへのビルドアップは状況に応じてしか使わずに,出来るだけ早く相手コートにボールを運ぶことを優先していたということです。
それ自体は何も悪くありません。
トーナメント戦が多い高校サッカーではよくあります。
しかし奈良クラブはこれまでもずっとGKからのビルドアップにこだわってきたように思います。
自陣でボールを奪ったらほとんどの場合はGKに下げます。
GKにボールを持たせたら,それぞれのポジションに戻ってチームとしてのバランスを回復し,丁寧なビルドアップを再開します。
ビルドアップ時の選手配置はおおむね1-2-3-2-3になります。
最近は2ボランチ気味にしたり,ボランチかインテリオールが右のサイドバックの位置に下りることもあります。
それは相手のプレスによって変えています。
それでもGKが相手のプレスに追い込まれてロングボールを蹴らなければいけなくなるのはなぜでしょうか。
いくつかの要因があるはずです。
① 正しいポジションに選手がいない。
② 止める蹴る等の実行の技術に問題が起きている。
③ 相手のプレスがGKにロングボールを蹴らせるように誘導している。
私はこの全てが当てはまるように思います。
FCバルセロナやマンチェスターシティーなどでもビルドアップ時にハマってしまい,やむを得ずロングボールを蹴る場面がありますから,完璧なビルドアップなど存在しません。
それでもこれほどのクラブがGKを使ったビルドアップを行っているわけですから,奈良クラブのこだわりは世界基準だとも言えます。
「スペースと時間」
「相手のプレスのかけ方」
ビルドアップ時にどこに有効なスペースが出来ているのか,だれが時間を持っているのか,を見つけることは簡単ではないですが,それがサッカーの醍醐味でもあります。
相手がどのようにプレスをかけてきているのかも重要なポイントです。
2トップでプレスに来るのか,それとも3トップでプレスに来るのか。
マンツーマンなのか。
それによってできるスペースと時間も決まってくるのです。
奈良クラブがCB同士でパス交換をするのも,相手のプレスの出方を伺いながら,スペースと時間を探しているのです。
FC大阪は今回のヴェルスパ大分と似ている印象があります。
というかJFLのほとんどのチームが似ています。
奈良クラブはサッカーの醍醐味を大切にしながら試合をする稀なチームです。
だからこそJに必ず上がってほしいと思います。
奈良クラブのGKからビルドアップが成功した瞬間に喜びを感じたら私たちはちょっとサッカー通になったということですね(^^)v