サッカーを理解する
サッカーというスポーツはゴール型のスポーツで,両チームの選手が一つのコートに入り乱れ,相手のゴールをねらい,自分のゴールを守ることで勝敗を競います。
バスケットボールなら相手のバスケットゴールにボールを入れることで得点します。
サッカーなら相手のゴールにボールを入れたら得点となります。
バレーボールのようなネット型だとネットを仕切りにして対峙するように選手が配置されます。
だから相手選手との接触はありません。
しかしサッカーは違います。
相手選手との接触も競技の一部です。
というより接触で相手を上回れば優位に試合を進めることが出来るのです。
分かりやすいのがラグビーですね。
必然的に接触による怪我の頻度が高くなりますので,ルールによって選手は守られていますし,日頃から接触に強い身体作りだけでなくケアも必要になるのです。
とはいえ勝敗を競っているので時には選手生命に関わるような接触もあります。
それは故意でなくてもです。
私の仲間にも激しい接触によって選手生命が短くなった選手がたくさんいます。
運命と言えば聞こえは良いですが,大好きなスポーツを楽しむ機会が怪我を理由に奪われるわけですから,非常に残念なことだと思います。
必ず激しい接触は起きる
そこで今回はこの接触についてうんちくをします。
私は選手時代はCBでした。
だから相手と接触する場合,こちらから仕掛けることが多かったです。
私が身体を張って相手を止めないと自分のゴールにボールを入れられる可能性が高まりチームが負けてしまうからです。
だから今更申し訳ないですがかなり激しい接触をしていました。
ワザとではないですがファール気味の接触は常でした。
思い出すのはヘディングでの競り合いです。
CBには相手のGKのロングキックをヘディングではね返す役目があります。
CBの強さを相手に見せつける花形のプレーです。
世界の屈強なCBは間違いなくこのプレーが強くそれを求められます。
私はそのプレーが得意でした。
だから恐れずに競っていました。
あるとき私はいつも通り思い切って競りに行きました。
そのときは勢い余って相手の頭に私のおでこが思いっきり当たったのです。
「ゴン!」
鈍い音がなりました。
私はおでこなので平気でしたが,相手はたまったものではありません。
運悪く出血までしてしまいました。
試合は中断し,救急車まで来る騒ぎになってしまいました。
こんな話をすると,親として子どもにサッカーをさせることが怖くなりますが,でもその危険性を知っていることは大事です。
サッカーは相手がいて楽しめるスポーツです。
どんなに感情的になっても,どんなに事情があっても,相手への思いやり(リスペクト)を忘れてはいけません。
だから相手への接触についても,故意に相手を傷つけるような悪質な行為は許してはいけないのです。
そのためのレッドカードでありイエローカードです。
腕を使う
私なりに勝負にこだわりつつも相手を傷つけない接触について考えてみました。
それは「腕を使う」ことです。
サッカーはボールを足で扱うことが大半ですので,どうしてもボールを奪うために足で奪いに行ってしまいます。
だから足での接触が増えるのです。
確か私が高校生ぐらいからシンガード(レガース)の着用が義務付けられました。
その前に映像を見るとソックスを下している選手ばかりです。
よくそれであんなに激しい試合をしていたなと思います。
私の時代はさておき,長男や二男,三男が痛い思いをするのは親として辛いです。
だから息子達には「腕を使え」と言っています。
簡単に言えば「鬼ごっこ」で鬼をタッチする感覚です。
相手の身体に自分の腕が届く距離を保ち,ボールを奪うと言うよりは相手の動きを腕で止める感じです。
腕を使うとファールのような気がしますが,それは相手の身体を掴むからファールになるのであって,掴むのではなく止めるのです。
腕を使う接触のメリットは相手を傷つけないところにあります。
さらには足は無理してスライディングすることもありませんし,不自然なステップをしなくても良いので例え逃げられたとしてもそのまま追い続けられます。
一石二鳥です。
私はボールを奪う時に「腕で相手の胸を押すように飛び込む」と教えています。
鬼ごっこで学ぶ間合い
この感覚を身に付けるのに最適な運動がさきほどの「鬼ごっこ」です。
小さいころから相手の懐に腕で飛び込んでいく感覚を身に付けることが出来,結果として怪我の防止にもつながるのです。
つまり自分の「間合い」を学ぶことが出来るのです。
近頃インテンシティーたデュエルという言葉が当たり前になりました。
でも相手を傷つけて良いインテンシティーやデュエルはありません。
サッカーというスポーツの特徴を理解し,安全な接触を身に付けて,楽しくプレーできる選手を育てることも大切な育成だと思います。
以上,イエローカードをもらうことが多かったポジションの経験と反省から綴った今回のうんちくでした。
少しでも役立つことを願っています。