エコノメソッドでプロサッカー選手を育てるまでのブログ
サッカー愛にあふれたうんちく話

誰のために学ぶのか

私がサッカーの指導に関心が高まり始めたのは,以前の勤務校で慣例にのようになっていた小学校対抗のサッカー大会でした。

サッカー熱のある有志の先生方が長年行ってきた大会で,私は1年目からコーチとして関わらせていただきました。

2年目までは私の思いに近い活動が出来ていましたが,3年目以降からは徐々にコーチの難しさを感じるようになりました。

私は小学校同士の対抗戦なので,教育的な意図が強い大会ととらえていました。

だから子ども達が主役であり,子どもの豊かな感性や主体性,社会性をサッカーを通して育てることに重点を置いていました。

そうすると試合には簡単には勝てません。

私の意図とは裏腹に,他の学校は走ることが得意な子をFWに置いてその子めがけてボールを蹴るダイレクトプレーを多くしたり,スポ少やクラブチーム所属の子で固めたりしていました。

この事が悪いと言う話ではなく,私はより強く目的が学校教育的だったというだけです。

私は子ども達全員にサッカーを通して主体性を学んでほしかったので,ボールを扱う技術が高い子どもほど低いポジションに配置し,丁寧なビルドアップを試みました。

短期の大会ですからそんなに上手くビルドアップが出来るわけではありません。

それでも私は,技術が高い子のためにみんながサッカーをするのではなく,技術の高い子がチームの底を支えながらみんなでゴールを奪い,みんなで勝利をすることに価値を置きました。

少年団でお父さんコーチをしている保護者の方から言われました。

「県トレに入っているAをFWに置いたら勝てるのに,なぜ置かないんですか。」

私はそれが分かっていました。

でも,それをするとみんながAのためにサッカーをすることになります。

Aをあえてボランチの位置に置いて,Aにはチーム全員にパスを供給し,より守備での貢献を求めたのでした。

その結果,惜しい内容でしたが初戦で負けてしまいました。

私は,体育でしかサッカーをしたことが無い子どもが惜しいシュートを打てたり,普段はよくわがままで叱られている子がチームプレーが出来たりとぎりぎりの勝負になったことに満足をしていたのですが,子どもはそうではありませんでした。

子ども達が

「先生,次の敗者復活戦は自分たちでメンバーやポジションを決めて良い?」

と聞いてきました。

私は

「どうぞ。そのかわり全員が出場することは守ろう。」

と答えました。

子ども達が選んだメンバーは,スポ少に所属している子どもたちが普段やっているポジションになり,そうではない子どもたちはその子たちに合わせるポジションになりました。

私は心の中で「やっぱりこうなるよな。」と思っていました。

知らず知らずのうちに子ども達の間には優劣や序列があり,それに基づいて悪気無く選んだり,遠慮したり,我慢したりするのです。

試合は,遠慮したり我慢したりした子のところで不利になってしまい,初戦よりも熱さの無い試合内容で負けてしまいました。

私の指導はかなり未熟なものだと痛感しました。

結局はコーチである私にやらされているサッカーになっていただけで,全ての子ども達にとって価値のある指導になっていなかったということです。

この課題を解決する方法はその後の大会でも見つかりませんでした。

引っ込み思案で自己主張が出来なかった子がボール保持者の名前を呼んでパスを要求でき,保護者の方が感動して涙を流されたこともありました。

反面,チームが負けたにも関わらず試合後のミーティングで「相手チームのゴールキーパーのプレーがキモかった」と言ってニヤニヤと笑う子どもがいた年もありました。

同じように指導していても,子どもが変われば,環境が変われば,時代が変われば,結果が変わることを私は学びました。

この大会はスポ少やクラブチームが集う大会ではありません。

申し込めば既定の学年なら誰でも参加できる大会です。

だからこそ根本にある心の部分を整えることが大事だと思っていたのですが,その心の部分ですら整わないことがあることも学びました。

私がそうであったように,サッカーの指導者は無意識に自分なりの「答え」を持ちがちで,その「答え」に合った子どもを育てようとしてしまいます。

しかし,子どもは多様です。

時代の流れの中で,指導者は常に「その答えが正しいのか」を自らに問う姿勢が大切なのではないでしょうか。

常に学び続ける。

自分をアップデートする。

誰のために?

子どものためにです。

育成年代のコーチの目的はそれしかありません。

きっと子どもが出してくる答えは求めた答えとは違うことばかりですが、違うと言うことが学ぶということ(自分をアップデートするということ)なんだと思います。