世の中は卒業式の季節になりました。
私は第5学年を担当することが多かったのでこの時期は多忙です。
六年生を送る会。
卒業式。
入学式。
これらの行事を5年担任団が受け持つからです。
単級だと一人で学級経営と並行して行うので,経験が少ない若手の頃は必死でした。
特に卒業式は6年生にとって小学校生活最後の授業ですのでそれを取り仕切ることは責任重大です。
では今回の投稿では卒業式を担当する視点で綴ります。
私がまず考えることは卒業式で子どもたちにどんな力を付けたいかです。
特に在校生は卒業式後も小学校生活が続くわけですから,学校教育目標に基づいて育てる必要があります。
小学校5年生は来年は6年生に代わって学校運営に関わることになります。
だから年度初めの4月からそのことを意識した実践を行う必要があります。
「今年は君たちが在校生を代表して卒業生を送り出す立場になる」
この言葉が年度初めに5年生に向けて伝える言葉です。
卒業式に向けて1年間をかけて準備をする。
そうすることで卒業生だけの卒業式ではなくなり,5年生の成長の場にもなるのです。
先日,中学校2年生の二男が
「今年は卒業式に出やないかん。人数が多いからガチめんどくさい。」
と言いました。
想像してください。
あなたが卒業生ならそんな在校生に送り出されて嬉しいですか。
そんな在校生がイスに座ってあなたをぼんやりと眺めていたら嬉しいですか。
私はこの二男の考え方こそ,これまでの取り組みの失敗例だと思います。
確かに長時間イスに座って耐えているのは退屈であり苦痛です。
それも関わりが少ない相手ならなおさらです。
だからこそ「卒業式は何のために行うのか」を理解することが大事なのです。
卒業式は卒業生にとってはその学校で行われる最後の授業であり,これまでの学びを確認し,自分に関わった方々に成長した姿を見せる場です。
在校生にとっては,卒業生に変わって学校運営をすることで学校を代表する立場になったことを自覚し,1年後の自分たちの姿を想像する場です。
きっと二男はそのことが身に染みるほど学んできていないのです。
私は卒業式の練習前に,在校生の前でその話をじっくりとします。
「君たちは6年生に変わって学校を代表する立場になった」
「この式に出ることが出来る子どもは学校から認められた子どもだけだ」
「卒業式は卒業生のために,保護者のために,誰かのために君たちが力を見せる場所だ。」
「卒業生の姿は未来の自分たちの姿だ。」
「みんなの本気で卒業生や保護者を寂しさや嬉しさで号泣させてあげよう。」
「卒業式で歌を歌うのは,みんなで同じ音を共有できるからだ。仲が良い子もそうでない子も同じ音を出すことで,その時だけはみんなが一つになれる。それってすごいことだと思わないか。学校はみんなが一つになれる場所なんだ。」
このことを我々教師が在校生に本気で伝えるのです。
私は卒業式の実行委員会を立ち上げて,出来るだけ子どもたちに式場の装飾や練習の計画などを提案させていました。
そうすると在校生の想いのこもった式になりますし子どもの主体的な活動になります。
過去には,卒業生が未来に向かって突き進むF1カー(三重県には鈴鹿サーキットがある)に乗っているイメージで,模造紙1枚分のF1カーを人数分描いたことがあります。
運転席には拡大した卒業生の顔写真を貼りました。
卒業生が単級だったので何とか出来たのですが,F1カーを描く作業は実行委員だけでは作業が終わらないのでボランティアを動員し,休み時間や放課後はずっと特別教室で色塗りをしていました。
教科の年度末のまとめと並行しているのでなかなか大変です。
でも日々は充実しています。
これはさすがにやり過ぎですが,ここまでやったら卒業式には思い入れしかありません。
当然,卒業生の意向を聞いているので卒業生もどんな式になるのかが楽しみです。
そうやって作り上げた卒業式は決して退屈ではありませんし,卒業生も在校生も晴れの日の舞台を満喫して終えることになります。
確かに教師主導の卒業式も悪くありません。
それが普通なのかもしれません。
「卒業生のために我慢しなさい。」
「ために」「ために」「ために」
この「ために」が「自分のために」なっていることを理解しているからこそ,「相手のために」がやらされていると感じないのだと思います。
来週は三男が小学校を卒業します。
我が家の小学校生活もついに終わります。
コロナ禍で卒業式から学ぶことが難しい時期が続きました。
今年はようやくこれまでの卒業式に近いものができるそうです。
三男は卒業生として,在校生から何を感じるのでしょうか。
三男は卒業生として,在校生に何を残したのでしょうか。
私は三男の最後の1年間を離れて過ごしました。
後悔はあります。
でもこの生き方で三男がどのように育ったのかが楽しみでもあります。
まずは卒業式で三男の姿を目に焼き付けたいと思います。