サッカーは野球と違うところがあります。
それは審判が止めない限り,アウトオブプレーにならない限り,ハーフタイムにならない限り,絶えず状況が変わり続けるということです。
1秒前に最適と分析した判断は1秒後には最適ではなくなり,もしかしたら最悪になるかもしれません。
そう言うスポーツです。
トップトップの選手とそうではない選手を比べるとするなら,ほとんどの人はきっとボールを扱う技術やフィジカル的な特徴に目が行くでしょう。
しかし,サッカーを少しだけ深く学んだ人なら,わたしが言っていることが分かるはずです。
トップトップの選手はプレイしている時間の間,目まぐるしく変わっていく状況を絶えず認知し,最適解を実行し続けることが出来る選手のことです。
フル出場したとするなら90分間です。
心肺機能の疲れも確かにありますが,実際は脳の疲れの方がはるかに大きいと思います。
それぐらい選手達は考えてプレイしています。
長男がジュニアユースの頃のことです。
当時は左のインテリオール(インサイドハーフ)でプレイしていました。
試合後の長男が私に言いました。
「考えすぎて,頭が疲れる。」
この言葉は小学校の頃には言いませんでした。
それだけエコノメソッドが長男に与えているタスクが容易ではなかったと思います。
長男が実行も含めて最適解を出せなければチームは淀み,最適解を出せばチームは循環するということです。
もはやボールを扱う技術は出来て当たり前の世界です。
先日,私が関わらせていただいているこども達が緊急時のサポートについて学びました。
ボール保持者が緊急事態になった時に,非ボール保持者はどのようにサポートをすべきかをトレーニングしました。
様々なトレーニングを順を追って行っていくことで,こども達はボールウォッチャーの状態が徐々に減っていきました。
当然ですが,緊急時にボールウォッチャーになっていたらチームはボールを奪われたり失点したりするわけですから,緊張感も高まります。
ビルドアップのトレーニングの時でした。
エリア1で2対2をしていました。
数的同数ですので緊急事態になる可能性は高いです。
「エリア1で緊急時代になったときは,エリア2からエリア1にサポートをしても良い」
というルールを追加しました。
すると次の瞬間です。
ディフェンス役をしていた私の間接視野にエリア2から全力でサポートに来た選手が見えました。
私の目の前の選手はそのサポートに気づき,「助かった」と言わんばかりで斜め後ろにパスをしたのでした。
「ナ~イス!!!!」
コーチ達から一斉に称賛の声が響きました。
これはあくまでトレーニングの1シーンです。
これで完璧に出来るようになったというわけではありません。
でも緊急時のサポートの価値を実感できたこども達は,きっと今後のプレイで意図的にこの判断をする場面が生まれるでしょう。
サッカーは習慣のスポーツだと言われる所以はこれです。
絶えず最適解を考え続ける習慣を身に付けること。
これがトレーニングの最大の目的ではないでしょうか。